狂気のエロス | エロティックスリラー『アンチクライスト』

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※ネタバレ含む感想なのでご注意下さい

作品情報

原題:ANTICHRIST

監督:ラース・フォン・トリアー

出演:ウィレム・デフォー, シャルロット・ゲンズブール

公開年:2009年

あらすじ

子供を失くした夫婦の悲しみと苦悩を、美しく、かつ残酷に描いた、カテゴライズ不能な傑作『アンチクライスト』。デンマークの誇る鬼才:ラース・フォン・トリアー監督作品。主演に個性派俳優ウィレム・デフォーと、セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンの娘で歌手としても活躍するシャルロット・ゲンズブールの二人を迎えた本作は、2009年カンヌ映画祭で正式上映され、映画史に残るオープニングの映像美や、上映会場で少なくとも4人が気絶・失神したというあまりに過激な暴力&性描写、初めて観た時には唖然とする以外にない結末などにより、会場がスタンディングオベーションとブーイングとで真っ二つに割れるなど、賛否両論の物議を巻き起こしたほどの衝撃作。シャルロット・ゲンズブールは本作の壮絶な演技で、カンヌ映画祭主演女優賞を獲得。

予告動画

壮絶な鬱作品

鬱作品で有名な「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の監督、ラース・フォン・トリアーが手掛ける本作。この記事を書いている時点で私は「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を見たことがないのでどれくらいの鬱さなのかわかっていませんが、本作も負けじ劣らずの鬱作品に仕上がっています。

最初から最後までずっと鬱。

プロローグから始まる事故死してしまった息子への自責の念に始まり、後半では妻の病気が悪化しているのか、夫婦間での擦れ違いが起き、壮絶なラストを迎えます。

鬱なのに綺麗

章仕立てで展開する本作、プロローグとエピローグはモノクロで表現されているのですが、モノクロにプラスしてスローで動く世界が非常にきれいに表現されています。プロローグでは”水”の表現が非常に艶めかしく、セックスに没頭する夫婦の淫らさがそこに表れていてすごくエロい。

ゆっくりと窓から落ちて行く子供と、セックスに耽る夫婦。鬱とエロが混じって感情が不安定になります。

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見ている方が苦しくなる

子供を失って精神が病んでしまった妻を見ていると、こちらが過呼吸になってしまいそうで非常に苦しくなります。見ている環境によっては本当にやばいかも。あらすじにある気絶・失神した人も、どこかで感情や呼吸がリンクして苦しくなってしまったのではないでしょうか。映画館でこれ見てたら私は苦しくなって途中で抜け出すと思います。

夫の冷静さに違和感を感じる

妻が精神を病んでしまった一方で、夫の方が病んでいる気配はなく、違和感を覚えます。夫はセラピストをやっており、妻を癒すためにセラピーを行うのですが、セラピストは自分自身の傷を癒せるものなのでしょうか。それにしても、夫から息子に対する愛情や無念さがまったく伝わってこないことはおかしいかなと。

二人は本当に夫婦なのか

夫が死んだ子供に対してまったく言及しないこと、本来家族に行ってはいけないセラピーを出来ること。これらを踏まえると、実は二人は夫婦では無いのではないかとも思えます。子供を失ったショックから精神を病んでしまい、自分を担当してくれているセラピストを夫だと思い込んでしまった、みたいな。

その方がしっくりくるというか、終盤の「助けてくれる」という妻の怖いまでの執念にも納得がいくような気がするのです。

子供を本当に愛していたのか

良くなるどころか、徐々に悪化していく妻の病気。それに連れて徐々に判明してくる子供の状態。

検視の結果、落下死に関しては間違いが無さそうなのだけれど、足が奇形していることが判明。その原因が、妻が子供の靴を左右逆に履かせていたからだということがわかります。うっかりしていたという妻の証言とは裏腹に、映像に映しだされるのは泣きじゃくる子供の姿。

また、子供の写真が出てきた時、一緒に映っていた妻の顔が無表情だったことにも不気味な印象を受けます。

更に、子供が窓から落下する時、セックスをしながらも横目でその瞬間を妻ははっきりと目撃していた描写もされています。

これらを合わせると、子供の死に対して病んでしまった妻が、実は子供を愛していなかったのではないかという疑問が浮かび上がってきます。

それではなぜ妻は病んでしまったのか。そこまでわかるような描写はされていませんが、もしかしたら育児疲れのような、愛情とは真逆の感情を抱いていたのかもしれません。子供が死ぬことを願っていながら、いざそうなってしまった後に精神を病み、まったく逆のことを思い込んでしまった。のかも。

狂気の足枷

足に穴を開けて、砥石をくっつける足枷は初めてみた。急に痛々しい描写が出てくるのでびっくりする。

エロ表現について

秘部に関してはガッツリモザイクが入っています。これは、恐らく本来は無修正だと思うのですが、日本の法律に合わせて修正されているのだと思います。

セックスシーンが生々しいのは良いとして、妻がいきなり自分のクリちゃんをはさみで切るシーンはビックリします。あそこも無修正なのでしょうか。股間ドアップ、それしか映っていないシーンなので、ものすごい迫力だったと思います。男性器を切るシーンは良くみるけれど、クリちゃんが切られるのは初めてみた・・・。

作品全体を包む鬱の空気があるので、エロいシーンもエロく感じないかもしれません。エロ目的で見るのはやめた方がいいと思います。

評価

エロさ:★★★★☆

鬱さ:★★★★★

総評:★★★☆☆

全体通しての鬱さと、ラストのインパクトもあって、もう一度見たいかと言われるとしばらくはいいかなと思ってしまうような作品です。気が滅入ってる時に見るのはやめましょう。

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